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※粗野が一周年記念企画「人気投票で上位五位に入った男性陣と温泉旅行」で、堂々一位だった土方さんとの温泉ネタです。鴨サンの設定で、さくらと土方さんは新婚さん。
客室に通された途端、絶句した。
次いで脳内を、「聞いてないよ」の言葉が駆け巡り。
「歳三さん、あれって・・・・・・」
「露天風呂だな」
茫然としたさくらに反して、歳三は特に驚いた様子もなく応えた。
十畳ほどの和室の向こう、壁の代わりになんとも開放的な格子状の木の引き戸で仕切られた、横に細長い板間を挟んで、存在感ありありの露天風呂。
歩み寄って、仔細に調べてみても、格子戸の他に扉はない。
どうやら脱衣所であるらしい板間と露天風呂を仕切る扉は、曇りガラスのサッシのみ。
なにこの造り!
ここ、温泉旅館だよねっ?
そーいうホテルじゃないよねっ?
混乱しつつ、「ちょっと着いたって連絡してくるね」とスマホを手に廊下へ出る。
歳三は怪訝な顔をしたが、引きとめはしなかった。
出産してしまえば、しばらく旅行にも行けないだろうと、兄をはじめ、近藤家に寄食する連中がプレゼントしてくれた温泉旅行。
その心遣いに、妊娠中の気分の昂りも相まって、泣きそうなくらい嬉しかったのに。
実家の番号を呼び出し通話ボタンを押せば、コール音五回で沖田が出た。
「あ、さくらさん。無事に着きまし・・・・・・」
「ねぇ、なんでっ? なんで露天風呂付きの部屋なのっ」
「だって、夫婦は一緒にお風呂に入るものでしょう? 今はアレだけど、前は平助と近藤さんも一緒に入ってましたよ」
噛みつく勢いでの質問に、沖田はのほほん答えを寄越し、さくらは思わず大きくせり出た腹を押さえた。
駄目だ、沖田と話していると子宮が収縮する。
早産しては叶わないと、さくらは藤堂と代わってくれるよう依頼した。
「だって、さくらさんは妊婦だし。風呂場で滑りでもしたら危ないと思ったからさ。部屋についてる露天風呂なら、土方さんの目も届くし、安心かなって」
藤堂の返答は、まったくもって彼らしい思いやりと心配りに溢れたもので。
目が届くことが嫌なんだってばーーーーっとは、言えなくなった。
「もしもーし。どうだよ、その宿。カップル専用の部屋選んでやったから、エロい造りでサイコーだろ。あ、でも妊婦相手じゃ土方さんも生殺しか」
藤堂にとって代わって聞えてきた原田の声に、やっぱり選んだのはお前かと怒りがこみ上げる。
「でもお前もう八か月だよな? だったらもうヤってもいいんじゃね? バックなら」
耳が穢れると、皆まで聞かずに無言で切った。
結局なんの解決にもならず、深いため息をついて部屋へと戻る。
座椅子に腰掛けて、仕事の資料らしきファイルに目を通していた歳三がチラリと視線を寄越して、問題の風呂へと顎をしゃくられた。
「飯まで時間あるから、入るか?」
「えっっっ」
それは、やっぱり「一緒に」だろうかと動揺が走る。
夫婦なんだから一緒に入ったっていいのかもしれないけれど、実のところ、さくらは歳三と共に入浴したことなどない。
実家にいた頃は、兄とも同居だし、あの連中もいることだし、とてもそんな勇気はでなかった。
妊娠して別居してからしばらくは体調が悪かったし、安定してからも、歳三の帰宅は夜遅いことが多いせいもあり、また歳三自身が一緒に入ろうなどと言うタイプではないので、そんな機会は訪れず。
「歳三さん、お先にどうぞ」
先に入ってもらって自分はロビーの土産物屋でもみてこようと進めてみるも、座卓にファイルを投げ出した歳三にあっさりと。
「別々に入ってるほどの時間はねぇし、せっかく部屋付き温泉なんだから一緒に入りゃいいんじゃねぇのか」
などと言われてしまった。
これが妊娠前なら、旅先という非日常に解放的になって、恥ずかしいながらも承諾していたかもしれない。
でも、今は。
「いや・・・二人で入るのはちょっと・・・・・・」
微妙に後ずさりながら、小声で断ると、歳三の眉がきゅっと寄る。
「なんでだよ」
「その、色々・・・恥ずかしいし」
「恥ずかしいって、裸になんのがか? 今更だろう、そんなもん」
呆れたように言われてしまった。
でも、違うのだ。
歳三の言う「今更」な裸は、妊娠前の裸だ。
妊娠八カ月の今、自分の体は以前とすっかり変わってしまった。
なんだか肌はカサカサするしっ。
脇の下は黒ずんだしっ。
乳房が大きくなった分、大きくならなくていいとこまで大きくなったしっ。
おへそは出てきたしっ。
おへその下にうっすら毛が生えてきたしっ。
まあ、有体に云うと、醜くなった気がするのだ。
「えーと・・・妊娠してるから。色々変わってしまったし。あんまり見せたくないと言うか・・・・・」
さすがに細部がどうなったかを口にする気はせず、ぶつぶつごにょごにょとはっきりしない言い訳をしていると、眉を寄せ、目を眇めてそれを聞いていた歳三は、「わかったよ」と言って腰を上げた。
「お前が嫌なら、外に出ててやるから、先入れ。暗くなちまったら折角の景色も見えなくなるだろうからな」
言われて目を向けてみれば、露天風呂の向こうに開けた景色は、水平線上に驚くほどの大きな夕日。
旅先でなければ決して見ることのないそれを、温泉につかりながら眺める気分はきっと最高だろう。
でも、自分が入浴している間に、きっと夕日は沈んでしまう。
そうしたら、夫は「最高の気分」を味わえない。
歳三さんが先に、と言いかけたところを、「言っとくがな」と遮られた。
「お前の体が変わっちまったのは、俺らの子供がココにいる証なんだ」
ココと、突き出た腹を撫でられて。
「俺が、有難てぇと思いこそすれ、悪い見方なんかするわけねぇってことだけは了解しとけよ」
言い捨てて出て行こうとする袖を、考えるより先に掴まえていた。
風呂の向こうに広がる大海原。
そこに沈む、奇跡のように綺麗な夕日。
一人で見るより、二人で見た方がきっと何倍も美しい。
そう思ったから。
「やっぱり・・・居て、ください。一緒に・・・二人一緒に見たいです、景色」
視線は合わせられないまま、それでもなんとか口にした言葉に、歳三がふっと笑う気配がして。
「二人じゃねぇだろ、三人だ」
そう応えた声に、三人目が同意してお腹を蹴った。
おしまい

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