今の俺には秀吉すら生ぬるい
秀吉は安全ベルト正しく使う習慣を
ネタバレ注意。
主人公の名前は「かな」です。
**********
三成「かな様――今、参ります」
同時刻、顕如の滞在する寺では――
顕如が机に向かい、織田傘下の大名に信長への謀反を促す文をしたためていた。
子猫「にゃあ」
その足元に子猫が無邪気にじゃれつく。
顕如「強いものだ、もう歩けるようになるとは」
子猫の頭を撫でようとして手を伸ばし、直前で躊躇った。
子猫は不満そうに声をあげて身体を摺り寄せる。
顕如「お前はあの女子に似ているな。……無垢ゆえに恐れ知らずなところが」
ぽつりと呟き、今度こそ顕如が子猫に触れようとしたその時――
顕如の部下「顕如様、大変です!」
顕如「何事だ」
青ざめた顔で顕如の部下がふたり走り込んできた。
顕如の部下1「織田軍の襲撃です、兵を率いるのは――石田三成!」
顕如の部下2「村に集めていた門徒は突然の襲撃に反応できず、押されるばかりです!」
顕如「何だと……?」
闇色の目が呆気に取られたように見開かれるけれど……すぐに表情を失う。
顕如「まずはあの女を確保しろ。奴らにけして渡すな」
顕如の部下1「はっ」
指示を受けた部下はたちまち走り出した。
残る部下に顕如は重々しく口を開く。
顕如「頃合いを見て門徒に退却命令を出せ。不意を突かれれば戦慣れしていない分、全滅の恐れがある」
顕如の部下2「はい!……顕如様は」
顕如「残って戦う。私の姿が見えれば、織田軍は門徒たちを追いはしない」
顕如の部下2「っ……しかし、それでは顕如様をお守りできません!」
顕如「落ちつけ。私がここで潰えても、門徒の多くが生きていれば信長への恨みは残る。いち早く私のもとにたどりついた門徒たちが殺されれば、これから来ようとしている者たちの意気が挫けるだろう。それだけは避けねばならん」
顕如の部下2「それは……っ」
顕如「これが私たちの、地獄のような最善策だ。お前たちも頃合いを見て退却しろ。命を無駄に散らすことはない」
顕如の部下2「……門徒たちを逃がします。他の者にも指示を伝えましょう。ただし、長年おそばにいた我々の中にあなたを残して逃げる者がいるとは思えません」
顕如「死ぬぞ」
顕如の部下2「元より覚悟の上です。どうぞ、最期までおそばに――」
血を吐くような声で言い残し、顕如の部下は走り去った。
顕如「……誰も彼も、愚かなことだ。無論、この私も」
顕如も錫杖を手に立ち上がる。
顕如「さて、別れの時が来たようだ」
子猫「みぃ…」
自分を見上げる子猫を顕如は手のひらですくい上げると、庭へそっとおろした。
顕如「行け。どこであろうと私のそばよりはましだ」
子猫は戸惑いながら光差す方向へよたよたと歩き始める。
顕如はそれを見送り、部屋を後にした。
「離してください……!」
顕如の部下1「いいから、ここから出ろ!」
(どういうこと!?何が起こったの?)
突然乱暴に部屋に入ってきた男によって私は腕を掴まれていた。
「痛……っ」
無理やり引きずられ痛みに声を上げた瞬間――
(っ……)
目の前の重い扉が勢いよく開かれ、差し込んできた光の眩しさに目を細める。
顕如の部下2「なっ、お前は…」
三成「その方から離れてください」
(うそ……)
「三成、くん…」
声を限りに名前を呼ぼうとしたのに、掠れた声しか出てこなかった。
掴まれた私の腕を見た三成くんの目に、静かな怒りが燃える。
三成「今すぐに離れろ――と言っています」
言葉と同時に、刀を抜き放った三成くんが閃光のように踏み込んだ。
顕如の部下2「ぐっ」
見えないくらいに速い一撃を受け、男は抜きかけた刀を離してうずくまる。
(あっ)
その隙に三成くんが手を伸ばし、素早く私を引き寄せる。
三成「お待たせして申し訳ありません。お迎えに上がりました、かな様」
(っ……逢いたかった。助けに来て、くれたんだ)
優しい声を聞いた途端、自分でも驚くほどの感情が溢れそうになった。
触れられた肌が燃えるように熱い。
顕如の部下2「っ、女を返せ!」
(危ない!)
よろめきながら立ち上がった男がもう一度襲い掛かり、
私は三成くんの背中に庇われる。
間髪入れず繰り出された鋭い斬撃が、わずか数太刀で男を倒した。
(すごい……)
三成「行きましょう」
「うん……!」
三成くんに手を掴まれ走り出す。
(言いたいことがたくさんあるけど、今は言葉にならない。後でたくさんお礼を言おう)
私たちは寺の裏手から森へ駆け込んだ。
三成の部下「三成様、かな様!よくぞご無事で」
数人の兵たちが私たちの姿を見つけて、馬で駆けよってくる。
三成「戦況はどうなっていますか」
三成の部下「一向宗の門徒たちは散り散りに退却中です。ご指示通り深追いはせず、一部抗戦していた者はほぼ制圧が完了しています。ただ……いまだ顕如が捕らえられておらず」
(顕如さんが…やっぱりあの人は、逃げずに戦ってるんだ)
三成「武田・上杉の方は」
三成の部下「織田軍の優位です。敵も粘っているようですが」
(すごい!いったい、どんな手段を使ったんだろう…)
気になることはたくさんあるけれど、今は口をつぐんでおくことにした。
三成「わかりました。引き続き、顕如の行方を追いましょう」
三成くんは繋いでいた馬に私を乗せ、自分はその前に乗り手綱を握る。
三成「全隊に合流します」
三成の部下「はっ」
???「その必要はない」
(え……)
不意に暗鬱な声が響き――
顕如「お前たちはここで死ぬのだから」
三成「あなたは……」
「っ、顕如さん…」
木々の間から数人の手勢を率いた顕如さんが駆けてきた。
三成「かな様、私に掴まって」
「うん…っ」
後ろの部下たちに向かい、三成くんの声が響き渡る。
三成「敵は手負いです、真っ向勝負を」
顕如「覚えておけ。手負いの獣ほど厄介なものはないぞ」
高く構えた錫杖から覆いが外れ落ち、鋭い切っ先がぎらりと光る。
(あれは……刃物!?)
三成「仕込み杖の錫杖ですか。…慣れない武器です」
顕如「行くぞ――」
(きゃ……っ)
双方一歩も譲らず、激しくぶつかり合う。
刀を打ち合う耳障りな喧騒の中、三成くんと顕如さんも対峙していた。
縦横無尽に振るわれる錫杖をかわし、三成くんが飛び込む。
顕如「……!」
顕如の距離で差し込まれた刀を、顕如さんは素早く弾き返した。
(怖い……。だけど、ちゃんと見てなくちゃ)
数度の打ち合いの末に、がちりと音を鳴らして錫杖と刀が噛み合う。
顕如さんの腕に力がこめ
れて硬く筋張る。
それと競り合うために、三成くんの手の甲には青く血管が浮き出ていた。
(三成くん……)
息を呑んで見守ることしかできない。
顕如「どうやって上杉・武田の陣を突破したか知らんが、相当の綱渡りをしたはずだ」
ふと、顕如さんが口を開いた。
闇色の瞳が三成くんの後ろにいる私に向けられて…
顕如「解せんな。なぜ、そこまでの危険を冒してお前はこの女を助けに来た」
(え?)
三成「そんなことは決まっています」
迷いない声が三成くんの唇からこぼれる。
三成「かな様を――愛しているからです」
「あ……」
目の前にある背中を見つめたまま、頭が真っ白になった。
戦場の喧騒が遠ざかり、三成くんのことしか目に入らない。
顕如「っ……」
その瞬間、三成くんの刀が重心をずらし鮮やかに錫杖を弾く。
かろうじて踏みとどまった顕如が、飛び退いて体勢を整えた。
顕如「愛ゆえか。……くだらん強さだ」
(愛って、本当に……?)
ある夜の天幕で交わした会話が、まざまざとよみがえる。
———-
三成「どうやら私は、この感情の答えを……見つけました。けれど――今の私には、まだそれを貴女にお伝えする資格がありません。貴女を守れる男になれたと確信したその時に、あらためてお話させてください。それまで……待っていてくださいますか?」
———-
(三成くんは……もう、確信したの?)
胸が痛いほどに高鳴っていく。
三成「愛しているから、この方を全力でお守りします。そのためならどんなことでもできる。それが私の強さです」
(っ……嬉しい。私も三成くんのために強くなりたい)
顕如「……戯れ言を」
顕如さんがどうしてか痛みをこらえるように顔を歪めた。
錫杖を構え直すと、りん…と涼やかな音が哀しく響く。
(何で、そんなに苦しそうに戦うの……?)
「っ……顕如さん、もう降伏してください」
顕如「何?」
三成「かな様……」
思いきって顕如さんをまっすぐに見つめて言葉を続けた。
「敵も味方も、自分自身さえ傷つけて……それで、あなたの心は救われるんですか?」
顕如「救われることなど、始めから求めていない」
「苦しんでほしくないんです!あなたは、優しい人だから」
(私には自分の目で見たことしか、わからない。過去に何があったかは知らないけど、今でもこの人の心に優しさが残ってるのは確かだ)
顕如「――断る」
顕如さんの両眼が暗い炎を灯し、爛々と私に向けられる。
顕如「私は鬼だ。……お前がどう思おうと」
顕如さんが再び馬を走らせ――
三成「……!かな様」
(え……)
三成くんの刀と打ち合わず、顕如さんはその横を走り抜けた。
すれ違いざまに錫杖の切っ先がきらめき、私に振り下ろされる。
「っ、顕如、さん……」
顕如「っ……」
殺気立った眼差しがわずかに揺らいだ気がした。
刹那――三成くんが刀を振るい、顕如さんが大きく体勢を崩す。
(三成くん!)
続く一撃で声もなく落馬した顕如さんに、三成くんの部下たちがすかさず刀を突きつけた。
三成「大丈夫ですか、かな様」
-選択肢-
三成くんは ◎
大丈夫 (2+4)
怖かった (4+2)
「うん、ありがとう。三成くんは……?」
三成「問題ありませんよ。貴女をお守りするのが、私の務めですから」
大きな手のひらが、ふわりと私の髪を撫でる。
その優しい感触に急に安心して、無性に泣きたくなった。
顕如さんが敗れたことにより、
その配下の人たちが戦意を喪失するにはそれほど時間がかからなかった。
三成「ひとつ、質問があります」
馬から降り、顕如さんを見下ろした三成くんが口火を切る。
顕如「答える義務はないな。織田軍にひとつの情報も漏らす気はない」
刀を突きつけられたまま、顔色ひとつ変えずに顕如さんが言い放った。
三成「ご安心を。これは個人的な質問です。先ほど、かな様に攻撃する際……最後の最後で躊躇ったのはなぜですか?」
(っ……やっぱり、気のせいじゃなかったんだ)
顕如「お前の、勘違いだ」
三成「そうは見えませんでしたが」
真剣な顔で問いかける三成くんを見据え、ふと顕如さんの唇にかすかな笑みが浮かぶ。
顕如「……ならば、お前にとって望まぬ答えになるだろう。それでも聞きたいか?私がこの女子に対し、どのような想いを抱いたか」
(どういう、意味……?)
三成「顕如殿、あなたは……」
三成くんは唇を引き結び、黙って顕如さんを見つめていた。
(三成くんには、わかったの?)
顕如「この話はもう終わりで良かろう。だから――」
三成「っ……」
物憂げに言い終わるやいなや、顕如さんは錫杖をひと息に振り上げる。
(まさか、まだ……っ)
慌てて斬りつけようとする兵の刀が勢いよく弾かれ、
顕如さんはそのまま自らの喉元に迷いなく鋭い切っ先を滑らせて――
(っ、死ぬ気だ)
「やめて!」
私が大声で叫んだ直後、
涼やかな音を立てて顕如さんの腕から錫杖が落とされた。
(あ……)
顕如「――なぜ止めた、石田三成」
刀で錫杖を叩き落とした三成くんを睨み、顕如さんの声が憎悪に軋む。
三成「……」
(顕如さんが死ななくてよかった、けど……)
顕如「私の命を盾に、門徒たちに蜂起を思いとどまるよう説得しても無駄だ。あの者たちには、いざとなれば私の屍を越えていくよう伝えている」
「そんな……」
唇を噛み締めて顕如さんの呪詛のような言葉を聞いた。
(こんな残酷な覚悟の前に、一体、どうすればいいの。たとえ信長様が勝ったとしても、大勢の命が失われてしまう)
三成「あなたの自決を止めたのは、そのような理由からではありません。もっと単純なことです」
不安な気持ちに覆われた私を、三成くんが優しく引き寄せる。
三成「顕如殿が死ぬと、かな様が悲しむようなので」
顕如「……」
「三成くん…」
温もりに満たされ、どこまでも真っすぐな眼差しに深く胸を打たれた。
三成「戦術とは困難を打ち払うためにある。私が必ず貴女の望む答えを導き出してみせます。だから……笑ってください」
「っ……わかった。三成くんを信じるよ」
(三成くんは私を守って、愛してると伝えてくれた。その人が言う言葉なら、何だって叶えられるような気がするから)
三成「――顕如殿とその手勢を捕らえてください」
三成くんのひと声で、顕如さんたちは縄をかけられる。
(顕如さん……いつかこの人にも、心安らぐ時が来るといいのに)
引き立てられていきながら、顕如さんは振り向きもせず口を開いた。
顕如「災厄の芽は枯れんぞ、石田
成。私たちの策はすでに成った。この先、信長の命を狙い――何千何万もの民が立ち向かうだろう」
三成「覚悟の上です」
三成くんは合図をして、部下たちを先に行かせる。
三成「かな様、さあ帰りましょう。織田軍のもとへ。間もなく日没です。他の皆様も引き上げてくるはずです」
「っ、みんなに逢えるんだね…」
数日間逢わないだけなのに、懐かしくて目の奥が熱くなった。
「……三成くん、私を助けてくれて、ありがとう」
三成「当然ですよ。――他ならぬ、貴女のことですから」
ずっと欲しかった柔らかな笑顔が惜しげもなく与えられる。
ようやく助かったのだという実感に包まれて、ふっと身体から力が抜けた。
(わ……)
三成くんは私を優しく抱き抱え、馬に乗せてくれる。
三成「皆様も心配していらっしゃいました。貴女の元気な顔を見れば、きっと喜ばれますよ。まずは再会を喜び、ゆっくりと身体を休め……それから、二人きりでお話したいことが山ほどあります」
「うん!私もたくさんあるよ。三成くんに伝えたいこと」
(私も応えたいから。……三成くんの想いに)
馬にまたがった三成くんの腰にぎゅっと腕を回した。
三成「それでは、参りましょう」
↓以下ノーマル↓
信長「これより本日の戦果とかなの奪還を祝い、宴を始める」
(私、本当に帰ってきたんだ……!)
兵たちはどっと喜びの声を上げ、配られたお酒で盃を満たす。
空が暮れなずむ頃、織田陣営にたどりついた私と三成くんを待っていたのは……
上杉・武田との戦いから引き上げてきた武将たちだった。
秀吉「かな、今日はお前が主役だ。散々怖い思いしたんだから、その分、楽しめよ」
「ありがとう!またみんなと会えてすごく嬉しいよ」
私もみんなと同じように盃を傾けると、とろりとしたお酒の味わいが口の中に広がる。
家康「顕如に囚われてたわりには、相変わらず呑気そうな顔してるけど」
(家康の素っ気ないけど、優しい言葉も懐かしい)
秀吉「お前が戻って来てよかった。ほっとしたよ。な、家康」
家康「…何で俺に振るんですか」
「秀吉さんも家康も、迷惑かけてごめんね。三成くんの策を成功させるために、みんな危険な戦いをしてくれたって聞いたよ」
家康「結局、決着はつかなかったけどね」
秀吉「ま、想定通りだろ。三成の思惑通り、信玄・謙信に相当の打撃は与えられた」
(本当にすごいな、三成くんは……私を助けるだけじゃなくて、戦況までひっくり返しちゃった)
少し離れたところで兵たちに囲まれている三成くんが眩しく見えた。
(話がしたいけど、すぐには難しそうかな)
織田陣営に戻る前に三成くんが言ってくれたことを思い出す。
———-
三成「皆様も心配していらっしゃいました。貴女の元気な顔を見れば、きっと喜ばれますよ。まずは再会を喜び、ゆっくりと身体を休め……それから、二人きりでお話したいことが山ほどあります」
———-
(三成くんは、私に愛してるって言ってくれた。ふたりきりになったらその返事をするつもり……だけど、何て言ったらいいのかな。あらためて考えると緊張してきた)
楽しいはずの宴の間も、三成くんを見るたびに、私はそわそわと落ち着かない気持ちでいた。
夜が更ける前に、戦場のささやかな宴は幕を閉じた。
(ええっと、三成くんは……)
まだ兵たちに囲まれて何か話しかけられている三成くんの姿を見つける。
(……うーん。今日お話しするのは、難しいかな)
がっかりしながら天幕に戻ろうとしていた時――
三成「っ、お待ちください」
後ろから少し焦ったように肩を掴まれて歩みを止める。
「三成くん!お話中だったんじゃ…」
三成「続きは明日にしてもらいました。今夜は大切な用があるので」
「大切な用って……」
三成「貴女です」
真剣な顔で言い切られて、とくっと鼓動が跳ねた。
(っ…三成くんも私と話がしたいって思ってくれてたんだ…)
甘酸っぱい想いで胸がいっぱいに膨らんでいく。
三成「私と一緒に来ていただけますか?かな様」
「…うん。もちろん」
私が頷くのを見て、三成くんは嬉しそうに手を引いた。
三成くんの天幕に入り、ふたりで向かい合って座る。
三成「お疲れのところ、お引き留めして申し訳ありません」
「ううん……。私も三成くんと話したかったから。まず、あらためて……助けてくれてありがとう」
三成「お礼はもう、充分です。私がしたくてやったことです」
優しい眼差しに包み込まれ、胸が高鳴っていく。
三成「これからも貴女をお守りします。明日からもまだ戦が続きますから」
「ありがとう…。確かに、まだ色々と大変なことが起こりそうだよね」
(一向一揆の問題も残ってるし、気が抜けないな)
三成「ええ。ですが、どのような困難な出来事を前にしても負ける気はしません」
「何だか、三成くん……変わったね」
三成「どういうふうに、でしょう?」
(それは……)
迷って目線を逸らした挙げ句、正直に言うことにする。
「前よりも……さらに男らしくてかっこいい、よ」
(照れくさいけど本当のことを伝えたいから…)
三成「っ……」
小さく息を呑む音が聞こえ、いたたまれなくなって俯く。
すると、私の顔を三成くんがそっと上げさせた。
三成「そう見えるとすれば、貴女のせいです」
「え……?」
三成「私を変えたのは、かな様ですから。貴女が、教えたんですよ?……何が『好き』ってことなのか」
「っ、好きって…」
さらりと言われた言葉に、頬が一気に熱を帯びた。
三成「どうして驚いた顔をするのですか?あの時、お伝えしましたよね。……愛していると」
「そう、だけど……っ」
(いきなり言われると、心の準備が…!)
あたふたする私を見て、三成くんは何かに納得したように大きく頷く。
三成「わかりました。貴女のお気持ちも、もっともです」
「三成くん……?」
三成「あのような状況では、私の想いがまったく伝わっていないのも無理はありません。これからあらためて貴女が得心するまでご説明しますから、お許しくださいね」
(これ以上、何を言う気なの……っ)
本気の顔になった三成くんに、思わずたじたじになってしまう。
三成「どうか目を逸らさないで」
(あ……)
その一言で、視線が縫い付けられたように囚われる。
やんわりと両手で頬を固定されているだけなのに身動きを忘れた。
三成「私は貴女を心からお慕いしているのです、かな様。そばにいると思考がぐちゃぐちゃに乱れてしまうくらい大好きで……どんなことをしてで
もお守りしたいほどに深く愛しています」
「三成、くん…」
(っ…こんなの、想像以上だ…)
ずっと欲しかった言葉を溢れんばかりに与えられて、目の奥が熱い。
「っ、私も好きだよ。私の方が、ずっと好きだった……愛してる……から、三成くんと一緒にいたいよ」
(やっと、伝えられた)
三成「っ…かな様…」
泣きそうな声で伝えた返事に、三成が目を見張る。
三成「……困りました」
「何が……?」
三成「貴女を想う気持ちが、抑えきれなくなりそうです」
「っ、抑えないで……もう、私から離れていかないで」
(こんなに、好きになってしまったから)
三成「ああ、そうではありませんよ」
私を宥めるように三成くんが穏やかに微笑する。
三成「かな様から離れる気など、もう私にはありません。私が言っているのは――」
(え?)
「ん……っ」
唇を軽く重ねられ、離れるまでの一瞬ですべての思考を奪われる。
三成「こういうことです」
(っ……)
三成「貴女が愛しくてなりません」
無自覚の艶を孕んだ囁きが、耳元に届いた。
三成「かな様。もっと触れても、いいですか?」
「どうして、そんなこと聞くの……っ?」
困り切って三成くんを見上げると、まぶたにキスを落とされる。
三成「それは、この先することに貴女の了承は必要ない…ということでしょうか。すみません、これ以上触れたら止まれなくなってしまいそうなので」
(ずる、い…)
理知的な瞳に蕩けるような熱が浮かんでいた。
それが私の身体の中に移って、胸が甘く焦がれる。
(そんな顔されて、嫌って言えるはずがない。三成くんのことが、ずっと好きで好きで……)
抵抗する理由なんてひとつも見つからなかった。
黙って頷くと、そっと手を取られ……
その爪先にも三成くんの唇が押し当てられた。
「っ……ん、三成くん……」
たまらなく恥ずかしくて顔を伏せる。
三成「夢のようです、こうして貴女と想いを交わせるなんて」
指先から手の甲へ三成くんの唇がたどり、やんわりと肌をついばむ。
じわりと熱が広がっていく感覚に耐え切れず、思わず手を引こうとすると――
(あ……っ)
手首ごと引き寄せらせ、端正な顔が間近に迫った。
三成「……離れては、だめですよ」
耳に吐息ごと囁きが吹き込まれ、首筋を唇がなぞる。
「三、成く……っ、ちょっと待……」
三成「貴女の望みなら焦るつもりはありません。もっと時間をかけましょうか」
そう答えると、三成くんはもう一度私の手をとって爪先に口づける。
すでに熱を持った指先を唇で甘くなぞられ……ぞくりと震えた。
(あ……まさか、最初から……?)
三成「かな様に私を受け入れてもらえるように、たくさん頑張りますね」
純粋すぎる愛に溶かされ、少しずつ身体と心を暴かれていく。
(……こんなに愛されたら、もう私を全部あげるしかない)
その夜、深くまで乱された私は……
この先ずっと――三成くんに翻弄される幸せを思い知らされたのだった。
**********
死。激エロ。
秀吉のセール通販情報、本当のトレンドをあなたにお届けします
秀吉の魅力にアタック。専門ポータル。
私は読みたいと思う本はとりあえず買ってしまう。そして本棚に入れておく。何か読みたいと思ったタイミングで棚の中からその時の気分に合った本を選ぶ。
そんな感じで選んで今読んでいるのが司馬遼太郎著「新史太閤記」。言わずと知れた豊臣秀吉の物語である。戦国時代の三英傑織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の中でだれが一番凄いかということがよく議論になる。いずれも傑出した人物であることは論を待たないが誰か一人ということになると私は迷わず秀吉を押す。理由は簡単。他の二人信長と家康は元々大名の家の生まれだが秀吉は違う。貧農の出である。大名と貧農では出発点が比較不能なほど違う。秀吉の負ったハンデキャップは途方もない。実際若い頃の彼の苦労は並大抵ではない。その辺りの様子は「新史太閤記」に生き生きと描かれている。司馬史観という言葉があるが、周辺状況から考察するに当時の秀吉はかくあったに違いないという筆使いで物語が進行していく。氏の洞察の深さや目の付け所の卓抜さが物語の説得力を増す。思わず納得し引き込まれる。とまれ秀吉の生き方と出世門語りは現代を生きる我々にも大いに参考になる大切なことを教えてくれる
秀吉 いいことプラス エネルギア
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男性の方が触れる機会が少ないはずなのに、配慮できるなんて素晴らしいです!!
益々ご家族が羨ましい~( ु ›ω‹ ) ु